リクルートで運用されている「ヨミ」という概念と「ヨミ表」

ヨミ表_リクルートで運用されている「ヨミ」という概念 ヨミ表の基本的考え方
ヨミ表_リクルートで運用されている「ヨミ」という概念

とあるベンチャーで働いている友人と話している時に、業績管理(営業の進捗など)をSlackで書いているという話を聞いて、びっくりしました。聞くと、Slackにおける業績管理情報はフロー情報としてさまざまな案件の情報が流れており、どうやって業績の見立てを立てるのだろう?と思いました。

リクルート社では、業績管理の方法としてヨミ表というものがあるといいます。リクルート出身者に話を聞いたところ、下記のような内容でした。

事業部によって多少仕様は違うが、基本的な概念は同じで、それによって業績管理・行動計画を立てるということが全社員のお約束ごととなっている。そして、そのヨミ表というものは、非常にいいツールであり、多くの会社がこの概念・ツールを使うことができればいい。

リクルート出身者談

とのことです。

では、「ヨミ表」は何が優れているのか。それを考える為に、まずはそもそもの「ヨミ」とは何か。そして、「ヨミ表」とは何かを説明します。その上で、ヨミ表運用の落とし穴とそれを埋める為の解決策を解説します。

ヨミ表の基本的な考え方について

ヨミとは何か。ヨミ表とは何か。

ヨミ表ドットコム_スプレッドシートで作られたヨミ表の例

ヨミとは一言で言うと、「進行中の商談を一覧化し、受注(売上)予測を立てたもの」です。

個々の営業の担当しているクライアントで、クライアント毎にどんな商談があって、どれぐらいの受注(売上)が予想されるのか。それの受注確度を「ヨミ」といいます。このヨミを管理するツールを「ヨミ表」と言います。なお、「ヨミ」のことを「フェーズ」と呼ぶ営業組織もあります。

ヨミ表の特徴とは

扱う商材や業界によって、ヨミ表の細部には多少違いはありますが、基本的な概念は一緒です。商談先、商談金額、商品、ヨミのステータスが書いてあります。ヨミ表で重要なのはこのヨミの合計と営業目標との差分を見て、営業目標を達成する為に必要な今後の行動計画を立てるということです。

営業組織(個人)が営業目標を達成する為に一番必要なことは、営業目標、という最終ゴールに対して、今何合目にいるのか、これからどれぐらい登らないといけないかのかをまずは認識することです。そういった意味でこのヨミという概念及びヨミ表というツールは非常に役立ちます。

圧倒的な営業力で業績拡大を成し遂げたリクルートで生み出され、創業して60年経つ現在でも運用されている「ヨミ」という概念は、営業する上ではシンプルかつ最も効率的なやり方と言えるでしょう。

ヨミの運用の落とし穴

ヨミ表の落とし穴①:ヨミ表の受注率を設定すると営業担当の主観に依存しすぎる

前述の図を見て、Aヨミ、Bヨミ、Cヨミ、といった各種ヨミのステータスとは何で、どう判断するのか?と思った方もいるかもしれません。まさにここのヨミの解釈がヨミ表運用に際して、落とし穴に習いがちなポイントです。
Aヨミ、Bヨミ、Cヨミ、などのステータスは、

・営業上の進捗

・その案件の主観的な確度

が多くの場合混ざった状態にあることが多いです。例えば、よくある話として、受注した状態を受注率100%と仮定し、

・Aヨミは受注率90%

・Bヨミは受注率70%

・Cヨミは受注率30%

などとそれぞれにヨミステータス単位の受注率(後述します)をかけておいて、傾斜をかけた数字の合計が目標数字を超えるようにヨミ表運営は行われることが多いです。では、このヨミのステータスはどう決めているのか?それは営業担当の見立てです。もっと言うと感覚と言えます。

ヨミ表ドットコム_ヨミの対応を%にすると営業担当の主観が混ざり込む


もちろん当てずっぽうではなく、かくかくしかじかこういう理由でこの商談はAヨミと理由はあるのですが、どこまでいっても最終的には感覚の世界になってしまいます。リクルートの場合、脈々とこのヨミ表というものが運用されてきています。つまり、膨大な経験則がある前提でこの感覚値でのステータス及び傾斜の%が運用されています。それでも、人によってここの感覚値には差異があり、ヨミの精度が高い営業と低い営業とが出てきてしまいます。

ヨミ表の落とし穴②:営業マネージャーがヨミの確認を詳細に行わない

ヨミ表ドットコム_営業マネージャーの役割は組織単位のヨミ精緻化による営業成績予測精度の向上と必要な営業活動の最適化

前項で紹介したヨミの精度が高い営業と低い営業がいる際に、そのヨミの精度を補っているのが営業担当の上司にあたる営業マネージャーです。営業マネージャーはそれぞれの営業担当からあがってくるヨミを、それぞれの営業担当の特性(営業担当のヨミの精度など)や営業担当への状況ヒアリングを通して、ヨミ直す(=より精度の高いヨミに変更する)ということを行います。

ヨミ表ドットコム_営業マネージャーが営業の商談状況を確認し、ヨミを共通して最適化すると商談進行の判断基準を揃えられる

そして、この営業マネージャーの作業もまた感覚値で行われるので、どこまで行っても感覚値の世界で進むということが起きてしまいます。営業マネージャーはある一定以上の営業経験及び実績があって営業マネージャーになっているので、営業担当に比べると精度が高いことが多いでしょう。

このようにして、営業担当が設定したヨミの精度を上げるのが営業マネージャーの役割ではありますが、多くの組織において、営業マネージャーは自身も営業の目標数字を持った状態で日々の業務を行っていることが多く、結果として自身のメンバーである営業担当のヨミ状況を細かく確認せず、いつまで経っても組織をあげたヨミの精度が上がらないことが起こる場合があります。

ヨミ表の落とし穴③:入力が面倒なので、営業担当が最新のヨミを反映しない

エクセル・スプレッドシートをヨミ表管理に使う際の問題点

これまでに紹介した2点は、営業担当と営業マネージャーの主観・忙しさからくる部分ですぐに対応が難しい部分ではありますが、最後の落とし穴はヨミ表のツールに依存する要因です。無料であることと拡張性に優れていることを理由に、ヨミ表はエクセルやスプレッドシートなどの表計算ソフトウェアを使って行われることが珍しくありません。しかし、これらのエクセル・スプレッドシートは集計作業に優れている一方で、複数の情報を入力したり、編集可能な領域と編集可能でない領域を分けたりすることがあまり得意でありません(例として、営業担当が自由に営業の目標数字を編集できる状態にある、ということはあまり健全な状態だとは言いづらいことなどが挙げられます)。

ヨミ表ドットコム_使いづらいソフトウェアに日々情報を入力するのは営業生産性低下の一因となりがち

例えば、以下はヨミ表の入力部分の例ですが、冒頭に紹介した集計結果を出すために営業担当の入力が必要な情報です。ただでさえ営業活動は顧客との調整・交渉など心身に対する負荷が大きい場合が多いです。日々そのようなハードな営業活動を行なった後に、以下のような見ても何も楽しくないエクセル・スプレッドシートを最新化するのは相当程度強いメンタルが求められるでしょう。

ヨミ表ドットコム_ヨミ表の運用をエクセルやスプレッドシートで行うデメリット
ヨミ表ドットコム_  実稼働メンバーの入力負荷を無視したエクセル・スプレッドシートが誕生しがち

SFA、CRMソフトをヨミ表管理に活用する際の問題点

世の中には、営業の進捗状況を日報のように書くことができるSFAやCRMソフトウェアが存在します。これらのソフトはさまざまな機能を持っており、しっかりとカスタマイズを行えばヨミ表の運用はエクセル・スプレッドシートに比べると良い側面はあります。しかし、これらのSFAやCRMは多くの場合、専属の管理者を用意して、営業状況に合わせてカスタマイズをするのに特別な経験や知見が必要なことが多く、費用とできる機能ほど活用できる会社は決して多くありません。

では以降でヨミ表の抱える問題点を解決するための方法の具体について紹介します。

ヨミ表の落とし穴の解決策

解決策①:営業担当の主観によらない営業プロセスによりヨミを定義し、ヨミの基準を揃える

ヨミ表ドットコム_営業の主観から営業プロセスにヨミを変更することで基準を揃えやすくする

ヨミの定義に営業担当の主観を入っていると、人によって基準が異なることでヨミの定義が揃わず、営業活動の統一が困難になります。そこでこの問題を解決する為に、まずヨミのステータスを案件の確度というふんわりしたものから、営業プロセスにしてしまうという方法があります。

営業プロセスとは、商談がスタートして、合意/受注に至るまでのプロセスを細分化したものであり、例えば以下のようなものがあります。

F:初回訪問と見極め
 ↓
E:課題の特定と合意
 ↓
D:先方担当者との価値の合意
 ↓
C:先方決裁者との価値の合意(見積書の提出)
 ↓
B:最終交渉(発注書の提出)
 ↓
A:必要書類の取得待ち(契約書の締結)
 ↓
受注

上記の形で、それぞれの商談案件が営業プロセスにおけるどのプロセスにいるのか。それを管理し、一覧化することで、感覚ではなく、行動によってステータスを管理することが可能になり、営業担当の感覚に頼った業績管理から脱却することができます。

ヨミ表ドットコム_営業プロセスにでヨミを定義することで複数の商談をより客観的に管理できます


リクルートが脈々と続けてきた「案件を一覧化し、売上予測を立てる」ヨミという概念と、人の感覚ではなく、営業プロセスによって案件を管理するということを掛け合わせることによって、業績の管理及び見立てがこれまでとは違う精度で実現できるようになります。

営業プロセスで商談を管理するメリットは、商談のヨミが進めば進むほど受注につながることです。ヨミ表ドットコムを使うと、初期設定で上記の営業活動に沿ったヨミの定義が設定されており、必要に応じてヨミの定義や名称、使うヨミの段階数を必要に応じて簡単に更新することができ、より組織にあったヨミ管理が可能になります。上記の営業プロセスに応じた管理に加えて、ヨミ表ドットコムでは「着地」という「現在置かれている営業ヨミによらず受注可能性が極めて高い」というフラグを用意しています。「着地」フラグはたとえば顧客の担当が極めて導入意向が高く、最終決裁者としての「社長」のような場合に使えるでしょう。着地フラグは「コミット」フラグとSFAやCRMツールなどで言われることもあります。

解決策②:営業マネージャーが確認すべきポイントを絞り込み、確認を簡単にする

営業マネージャーは多くの場合、営業活動に加えて、他の営業グループや他部門と関わる調整がある場合があり、とても忙しい職種です。従って、確認すべきポイントを最小限に絞るべきです。ヨミ表ドットコムであれば以下の点に絞った確認が可能です。

営業目標との差分を確認し、どこまでのヨミの受注が必要かを確認する

まず、いくら目標達成と差分があるのかを見る必要があります。

ヨミが高い順に、案件の状態を確認していき、ヨミの状態が適切であることを確認する

この際、ヨミのフェーズをしっかりと確認し、

  • 定義に沿ったヨミであること
  • ヨミが先週に比べて適切に進捗をしていること。進捗していなければ原因を探る

2点を行いましょう。なお、ヨミが進捗していない場合に、例として相手の決裁権限を持つ担当者が出てこないので、営業マネージャーのあなたが案件に同行することでより相手の決済権限が高い人たちと商談できる機会を作り出すことができればより案件の受注確率は上がるでしょう。ヨミ表を使うことで、限られた時間の中で営業数字達成のために行うべき営業活動の種類とをの優先度を明確にすることができます。

商談が足りない場合は商談数を作り出すことを行う

もしもヨミをどれだけ積み上げても目標達成に到達しない場合は、商談を作り出すことが必要です。この場合は、見込み顧客、既存顧客へ連絡を取り、商談の機会を作り出す必要があります。すでに進行している商談のヨミを次のステップに上げていくことを行いながら商談の機会を作り出すことは大変かもしれないですが、架電を行う担当を決める/架電を行う日付を決めるなどして、商談を作り出す機会を用意することで見込み商談を作り出すことができます。

解決策③:営業担当にリアルタイム更新してもらうには、ヨミ管理に特化したツールを使う

営業担当がヨミを更新しなくなる問題については、ヨミ管理に特化したツールを使うことで、ヨミ管理に特化するのが良いでしょう。ヨミ表ドットコムを使うと更新する箇所を明確にして、ヨミを更新すると即時にグラフにヨミの積み上げ状況を反映することができます。このようにリアルタイムのフィードバックを営業活動にかけることで、より効率的な営業活動に繋げることができます。

クラウドサービスのヨミ表でできること

クラウドサービスのヨミ表を使うことで、営業のヨミ管理に特化した機能を今日から即日ご利用いただくことができます。まずは無料トライアルで、ヨミ表でどのようなことができるかを試してみませんか?